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2014年12月17日 (水)

「天にひびき」(少年画報社:やまむらはじめ)

「一番最初の 観客」(曽成ひびき)


幼い頃にオーケストラの練習場で出会った曽成ひびきと久住秋央。休憩中に失踪した父親の代わりにオケの指揮をしたひびきの鮮烈な才能に、秋央は衝撃を受ける。9年後、秋央は、音楽への情熱を失いながらもヴァイオリン以外に取り柄もないといった感じで入った音大で、ひびきと再会を果たす。
ひびきの求める音楽を奏でんがために、秋央は再び音楽への熱を取り戻す……

 
 

やまむらはじめの音楽漫画がついに完結。

世間的には「カムナガラ」とか「神様ドォルズ」とか、伝奇アクションもののイメージが強い感じがしますが、わたし個人としては鬱屈した主人公を描いた青春ものがピカイチの作家さんだと思います。
なので、この「天にひびき」はまさに氏の得意とするところ、毎回楽しく読ませてもらっていました。
 
01
 
序章。印象的な1シーン。音楽と戯れる娘に、父親は指揮者の引退を決意する。
 
02
 
同じように、主人公の秋央も音楽への情熱を奪われてしまう。
しかし、音大に入って、彼女と再会することで、「彼女の出そうとする音を演奏する」という目標を得て、もがき苦しみながらも進んでいきます。
 
この物語の素晴らしいところは、天才・ひびきと主人公・秋央を、ライバルではなく、指揮者と演奏者に配置しているところ。作中で言及されているように「指揮者は音を出すことがない」。その指揮者の中に響いている音楽をいかにして汲み取り、音として表現するか。その切磋琢磨がスリリングに描かれます。
また、ひびきと秋央の関係だけではなく、この物語は音楽に関わる人たちの群像劇でもあります。ひびきと秋央はライバル関係ではありませんが、ある意味ライバル的な立ち位置になる指揮科の色男・梶原。
 
03
 
チャラチャラした外見とは裏腹に苦労人であり、努力の人。ゆえにひびきの天才っぷりとの対比が痛々しい。
 
学生を主軸にした物語なので、当然色恋のなんやかやもあります。
 
04
 
秋央の幼馴染みの迫田美月。ピアニストでヨーロッパで賞など取って、すでにプロとして活躍している。画像は秋央のアパートを訪れる前の身だしなみチェック。可愛い。
彼女はすでにプロとして活動しているので、学生たちの中に別視点を持ち込むという働きもします。あと、秋央のケツを蹴り飛ばします。こりゃ、尻に敷かれるなぁ、といった感じw
 
05
 
もう一人が、この黒ずくめの女性、“音羽良の黒姫”波多野深香。ロシア音楽をこよなく愛する技巧派ヴァイオリニスト。秋央に片想い中。あ、音羽良というのは舞台になっている音大の名前です。
 
学生の他にもリハビリ中の老音楽家や、若手オーケストラたち、引退した名演奏家などさまざまな登場人物たちが描かれています。
 
そんな中、わたしがとくに好きなのが、こちら。
 
06
 
ひびきの指導教官でもある須賀川先生。オケの自発性や個性など知ったことか、プロのオケでも締め上げる、求める音楽のために一切の妥協を許さない独裁者。
すこし長いですが、9巻にある須賀川先生に対する秋央の独白を引用します。
 
「(前略)ゲネプロのときにあれこれ思った不満。時間を置いて冷静になってみれば、それらが全部この演奏をキチンと構築してゆくための細かい“詰め”である事に気づく。この人はひびきが直感でやっていた事を、全部、理詰めで組み上げてゆくんだ。(中略)そう、天才でない以上、普通の人間はそうやって高みを目指すしかない。無論そうした所で限界は自ずとある。たかが知れてる。けれどそんな凡俗の徒であろうと、やれる事を全てやり尽くし、幸運にも、その努力の方向が間違っていなければ、ごく……ごく稀に……カミサマが振り向く。奇跡がおきる」
 
天才でない人間の、あまりにも悲観的ではあるけれど、それでもごくわずかな可能性を求める心境。この作品を象徴してあまりある独白です。
 
もっとも、この須賀川先生にしてひびきを前にしては……
 
07
 
ご覧の有様である。
まぁ、ここまでひびきの天才っぷりを書いてきましたが、作中は彼女の挫折・苦労もふんだんに描かれます。天才といってもまだまだ若く、足りないものが沢山なる。何より、
 
08
 
自分で音を出さない指揮者。他の演奏者にはない苦労があります。
 
成長物語ではあるのですが、氏の作品に共通する傾向ですが、飛躍などなく、感動はあれど一足飛びの開放感はほぼありません。まさに、地道に一歩一歩進む様を読む感じ。それが実に面白い。
 
もうひとつ、この作品を読むうえで外せないのは作曲家・吉松隆 によるコラム。わたしのような楽器を演奏したこともなければ楽譜すら読めない門外漢にとっては非常に為になるコラムでした。1巻の指揮者のタイプ別の話なんかはとくに面白かったです。これがあったので、作中の登場人物たちの価値観を「なるほど、こういう見方なのかな」と推測しながら読むことができました。
 
そんなわけで、凡人が天才を求める物語。完結したこの機会に是非手に取ってみてはいかがでしょうか。
 
と、そういえば、主人公・久住秋央の顔画像を紹介していませんでした。
 
09
 
もとい。
……上の画像は極端ですが、しかし、あんまり締まった画像がない主人公だなw
悩んだ末、コンクールのシーンから。
 
10
 
眼鏡のいい男ですよ(とってつけたように)。

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